今日もまた月命日で決まった家に行き、お勤めを済ませて次の家に行き・・・を繰り返していた。夕方までは特に起伏のない平凡な部類の一日だった。
あるお宅でのこと。
そこのご主人は二年前に何の前触れもなく脳梗塞で倒れ、重い障害を負った。入院されてからやがて自宅でのリハビリへと年月は過ぎ、その間、奥さんから色んな悩みや苦しみや希望の話を伺ってきた。それは現在進行形の悩みや喜びでもある。
言葉を失ったご主人はベッドの縁に腰掛けてニコニコ笑顔でペこりと頭を下げて挨拶をして下さる。
自宅に帰って来られてから一年半、ほぼ毎月のようにそんな挨拶が続いてきた。
今日、いつものように家に上がり、ご主人に挨拶をすると『どうも』と言う応えが返ってきた。
二年ぶりの声だった。
ニコニコ笑顔はいつもより誇らしそうに見えた。
ご主人と奥さんが乗り越えてこられた時間と血の滲むような努力の結晶の『どうも』だった。
帰り際にはもう少し話して下さった。僕は泣きそうな笑顔で言葉を交わし、失礼した。
ほんとうによかった。
うん。よかった。